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7分間の読み物

インスピレーションを与える設計:フランク・ロイド・ライト設計のSCジョンソン社アドミニストレーションビル

1936年、SCジョンソン社3代目経営者のH.F.ジョンソン・ジュニアは、本社ビルの設計にフランク・ロイド・ライトを建築家として起用しました。  新本社ビルの施工はすでに始まっていたにも関わらず、よりモダンなアプローチを追求したかったH.F.は 計画を白紙に戻し、イノベーティブなライトを起用するというリスクを選びました。 
 
後に彼は、「普通の建物なら誰でも建てられる。私は世界一のオフィスビルを建てたかった。それを実現するには世界一の建築家を起用することが、唯一の道だ。」 そうして、その後数十年に及ぶH.F.とライトの絆が始まったのです。  
H.F.ジョンソン・ジュニアとフランク・ロイド・ライト、SCジョンソン社にて
1937年、H.F.ジョンソン・ジュニア(右)とフランク・ロイド・ライト、アドミニストレーションビル建築現場にて。

 

新SCJ本社:他に類を見ないオフィス

窓としてしつらえた約69キロメートルのパイレックスガラスのチューブから、グレート・ワークルームにそびえる支柱までを備えた、アドミニストレーションビルは極めてユニークな職場です。さらに、フランク・ロイド・ライドが設計した中で唯一現在でも機能している、企業本社ビルでもあります。

1939年にウィスコンシン州ラシーンに開設したこの建物は、20世紀を代表する建築物トップ25の1つとして数えられており、現在のSCジョンソン社にも流れるイノベーション、大胆さ、冒険の精神を表現しているものです。
アドミニストレーションビルは、皆さんが期待しているものにはなりません。しかし、1つだけ保証できるのは、完成したときには気に入っていただけるということです。

建築家、フランク・ロイド・ライト

ライトは、他に先立つこと数十年、その当時から革新的なモジュラー家具とオープンスペースのオフィス設計を採用し、より生産的な職場を築きました。アドミニストレーションビルは、アメリカ初の全館空調完備施設の1つでもあります。

この建物で最も有名なのは、おそらくアドミニストレーションビルのグレート・ワークルームの支柱でしょう。ライトは「樹状」(樹の形)と呼びましたが、支柱の一番上を支える部分の独特の形から、蓮の葉形とも呼ばれました。支柱は床に接する部分の直径が約23cmで、天井部分では約560cmに広がっています。 
 
その美しさにも関わらず、この支柱を良しとするライトの楽観的な考えは、誰しもが受け入れたわけではありませんでした。当初、ウィスコンシン州産業委員会は、支柱のデザインが非現実的であるとして設計計画を却下しました。しかしライトは思いとどまることなく、
 
1937年に構造的完全性の実験を監督。数百名の見物人、そしてH.F.自身が、この劇的な現場実験を見守るために集まりました。その結果、支柱はその価値を証明し、60トンもの荷重に耐えました。これは実に、義務付けられた重量の10倍で、建設が承認されました。 
フランク・ロイド・ライト アドミニストレーションビル構造試験
アドミニストレーションビルの支柱が、構造試験で規定の10倍の荷重に耐えることを証明したとき、建設が承認されました。
フランク・ロイド・ライトの手がけたSCジョンソン社 の「睡蓮の葉」
0.5エーカーのグレート・ワークルーム全体にそびえる支柱の完成像は、クリエイティビティとインスピレーションの森です。

細部に至るまでフランク・ロイド・ライトが設計

ライトが重視していたのは、建物の構造自体のみではなく、アドミニストレーションビルに向けて40以上の家具を設計しました。そのそれぞれが、建物の独特なデザインに映え、仕事がはかどるように創られています。グレート・ワークルーム周辺を簡単に移動させられる、車輪付きファイルカートなどはその一例です。オープンな「鳥かご型」円形エレベーターが地下からペントハウスまで通じており、建物をパノラマで観ることができます。
 
ライトはさらに、暖かな赤茶色を、外装および内装の壁に採用しました。ほとんどのレンガ造りの建物は、数種類の形しかないレンガを使っていることから、レンガに合わせて建物が設計されているとも言えます。一方、アドミニストレーションビルは、レンガが建物に合わせて創られたのです。 
 
内装および外装の半円型や半円角用レンガなど、200種類近くの形のレンガが創られました。レンガを引き立てる色のカソタストーンが縁取りに使われ、横方向のモルタルの継ぎ目が伸び、建物全体を流れるようなスムーズな印象にしています。
フランク・ロイド・ライトは、完成したアドミニストレーションビルを、モダンビジネスの粋な建築的解釈としました。彼はこの建物を、「祈りを捧げる礼拝堂のように、インスピレーションの湧く仕事の場として設計した」と述べています。
 
そしてこの建物は、H.F.ならびにライトが意図したこと、つまり SCジョンソン社を他と一線を画す企業とし、ユニークなビジネスとして大きな注目を集めるということを実現したのです。『ライフ』誌は、アドミニストレーションビルを、1939年にニューヨークで開催された万国博覧会に起用された未来的建築物と比較して、「未来の形」と称しました。  
これまでの建物とは一線を画す、海外からのインスピレーションを一切受けていない、純然たるアメリカ式建築物である。 

『ライフ』誌(1939年)

 

ぜひ、ご自分の眼でアドミニストレーションビルをご覧ください!当社のグローバル本社と敷地内のフランク・ロイド・ライトの作品を巡るツアーは、事前予約制で、無料で一般公開されています。  

 
ツアーにご予約いただき、アカデミー賞受賞映画もご覧ください。数十年前に訪れていただいたお客様と同じく、現在でもインスピレーションを感じていただけることと思います。優れたデザインは、決して色褪せることがありません。 
お客様と社員の安全を確保するため、SCジョンソン社は、引き続きグローバル本社キャンパスでの対面ツアーやプログラムを一時停止します。

新型コロナウイルス(COVID-19)に関する懸念を踏まえ、対面プログラムが再開する日は未定です。引き続きFacebookのVisit SC Johnson
で最新情報を提供します。